EPISODES それぞれの「これから」

苦労は覚悟。
好きなクラフトビールに
囲まれて過ごす人生を選択

真田 了仙さん

(50代)「LUSH LIFE」オーナー

  • 広告業界/プロモーション・プロデューサー
  • クラフトビール専門店経営

独立を決意したきっかけ

自分が身を置いていたのは、比較的若い人中心の業界。それもあって再就職活動前からミドル世代の転職の難しさは感じていました。(よほど頑張らないと再就職できない)という危機感を覚える一方で、(このまま同じ仕事を続けていくのか?)という思いを抱えて再就職活動が始まったのです。
当然、迷いがあるまま面接に挑んでも、うまく先に進みません。
ある時、キャリアカウンセラーとの面談で、私が好きなクラフトビールの話題になったんです。以前通っていた専門店の雰囲気や好きなビールの味、メディアで注目されつつあるが、まだまだ専門店が少なく市場性があることを話すうちに“クラフトビール専門店で独立する”方向性がおぼろげながら見えてきたのです。
キャリアカウンセラーが「もし、独立を考えるならば、このタイミングでしかできない。問題点や、やるべきことを整理して動いてみては?一方、応募できそうな企業があったら応募する。並行してしばらく動いてみましょうよ」と両輪で活動することを勧めてくれた事で、気負わず独立活動に踏み出せたような気がします。

その後、「独立セミナー」に参加。一気に「独立」モードになった勢いのまま、ネット上で見つけたビールメーカー主催のセミナーにも参加。店のコンセプトや食材の仕入れ先の紹介等、聞いているうちに「自分の店」の青写真が出来上がりつつあったのです。

開店までの軌跡

妻の反対

我が家には教育費のかかる年代の子供が二人。独立する事を妻に告げたら予想通り『反対』でした。「失敗したらどうするの?」――これが妻の反対の理由です。
そこで、「失敗しないために、このような打ち手を講じる」「最初は不安だが、軌道に乗れば大丈夫」と再就職した場合と、独立して顧客を獲得した場合のシミュレーションを提示、納得してもらいました。まるで融資の審査みたいですよね(笑)。正直大変でしたが、事業計画、資金計画をしっかり立てる事が、「独立=自己責任」の気持ちを確立させたように思います。今、妻は週末手伝いに来てくれています。キャリアカウンセラーから「独立には、家族の協力が絶対だからね」と強く言われたことも、妻を必死で説得した動きに繋がったのかもしれません。

物件探し〜開店へ

自宅周辺でリサーチしたところ、競合店がない「桜新町」に店舗が見つかり、店舗探しをしたときに出会った不動産会社が内装を安く請け負ってくれ、イメージ通りの店内に仕上がりました。ビールの仕入先も開拓し、開店時には35社。(今は50社超に増加)2012年7月に開店の運びとなりました。
このように言うと順調に進んで見えますが、実際は、店舗の契約直前でキャンセルされたり、機材トラブルが生じたりと何度かくじけそうになった事もありました。そんな時、キャリアカウンセラーが過去に独立した方の事例を元に「このような壁に当たった時、このような動きをして上手くいった」といった話をしてくれたことがヒントになり、モチベーションが上がったことを覚えています。キャリアカウンセラーは、単なる事例ではなく失敗から成功までのプロセスを伝えることで、私のやる気が出るとわかっていたのだと思います。

開店後、そしてこれから

新規顧客開拓のためにホームページの開設や各種グルメサイトへの掲載など、広告業界の経験を活かした戦略で、順調な滑り出しでスタートすることができました。計画では、半年程度は赤字を想定、その後黒字に転換するはずだったのです。
しかし、思ったより黒字転換時期が遅かった。労力も費用も掛かる新規顧客開拓に注力しすぎて、リピート対策が手薄だった事が要因と分析しています。対策を講じてからは、徐々に常連客も増え、翌年には黒字化できました。無理な資金計画でなかった事が幸いしましたが、カツカツの資金計画だったら、盛り返す前に廃業になってしまうでしょうね。

「独立」とは「自己責任」の一言に尽きると思うんです。結果がストレートに自分に跳ね返ってくる。全て自分で決め、自分で動く。それができないと「独立」は難しいように思います。前職時代と比べると、実質の労働時間は「倍」になっている。まだまだ“安定”とは言えないので、とにかく今は経営の安定が当面の目標。
『楽』ではないですよ。でも、好きなクラフトビールが毎日飲める生活、悪くないです。

「LUSH LIFE」情報

東京都世田谷区桜新町1-11-4 フジヤビル3F(東急田園都市線 桜新町駅西口徒歩3分)
TEL : 050-3515-5521