EPISODES それぞれの「これから」

おもしろくって辞められない!

58歳、初めての転職先はJリーグ

清水 祐治さん

(50代)/活動期間:4か月

  • 精密機器製造販売/営業・商品企画
  • 株式会社岐阜フットボールクラブ(営業)

退職を決意するまでどうせいつか辞めるなら

長年、大手メーカーで精密機械(時計)の営業や商品企画に従事。辞めるつもりは全くなかったのですが、ある日会社が早期退職制度を発表。私は70名ほどの部下に対し、制度を伝える役目を仰せつかったんです。やはり、多くの部下はショックを受け、“退職し、再就職する”ことに消極的でした。でも、「いま退職すれば加算金も出るし、再就職支援会社のサポートもつく。今の会社に残っても、仕事内容も待遇も変わるだろう」-----そんな話を部下にしていく中、自分自身が今やめたらどうなんだろう、と今後をシミュレーションしてみました。その結果、「どうせいつかは退職する。ならば今がチャンスじゃないか?」と考え、早々に制度に応募したのです。
退職を決めた直後は、しゃかりきになって働くつもりはありませんでした。「そのうちに何かしらの仕事に巡り合えるだろう。そのタイミングで動けばいい」と再就職先に関して、深く考えてはいなかったように思います。

再就職活動をはじめてFC岐阜との出会い

キャリアカウンセラーと今までの仕事の棚卸をしたときのこと。前職時代にプロジェクトを組み、人気漫画家とのコラボによる腕時計を企画しましてね。大手出版社社長に話を持ちかけ、意気投合したことを話したのです。
仲間と商品を企画する楽しさ、商品が認められて契約が成立したときに味わった達成感、顧客の喜ぶ顔…。今思えば、全然実用的ではなかった時計なのに、売れたんですよ。仲間と一緒に『無』の状態から何かを創出する仕事は、本当に面白かった。だから飛び込みで企業訪問することなど、全然怖くなかった。そんな話をしたらキャリアカウンセラーは「清水さん、その話ワクワクするね」と面白がって身を乗り出してきたのです。「この経験は、私の財産。面白い仕事、仲間と共にウキウキする仕事ができればいいですね」。大ざっぱではありますが、これが自分の希望する方向感が決まった瞬間だったように思います。

数日後、キャリアカウンセラーから「この求人、清水さんにピッタリだと思う」と岐阜フットボールクラブ(FC岐阜)の営業職の求人を紹介されたんです。営業、それはスポンサー集めの仕事。今まで“形あるモノ”を売っていた私にとって“目に見えないモノ”を売るこの仕事に、当初は胡散臭さを感じていました。一方で、胡散臭さの後ろに隠れている『エンターティメント』の匂いに魅かれていた部分があったような気がします。
前職の会社がJリーグチームのスポンサーだった関係で、多少、仕事内容を知っていたこともあり、担当のキャリアカウンセラーさんに「これ大変な仕事なんだよ〜」と笑顔で言いながらも、応募を決意。すると、58歳の私が、若いライバルを押しのけて採用されたんです。
入社後すぐに社長から「清水さんは営業のベテランなので、若いメンバーにいろいろ教えてほしい」と言葉をかけられました。『若い人の“営業育成”』これが高年齢の私が採用された理由、そして私への期待でした。

異業界に転身して異業界で味わった“醍醐味”

私が入社した時のFC岐阜は、財政難をなんとか脱し、『仕切り直し』の時期でした。経営を安定させるためには、スポンサー集めが重要。そのために私が入社したのですから。ところが、周囲を見渡すと、皆、営業経験が少ない若いメンバーばかり。新規営業で断られると、すぐに挫けてしまう。せっかくスポンサーになってくれた企業に対しても、試合結果が芳しくないと、どうも足が遠のいてしまう。そんな営業部隊だったのです。
長年の営業経験で“どんな時でもへこたれない、ピンチの時でもノープレッシャーで戦える”ことが私の強み。『継続が大事』と、断られても通い続ける。丁寧に対応するが、決してへりくだらないことをモットーに地元企業を回り続けました。地元企業は、どこも地域の活性化を願っているから、FC岐阜を一緒に応援していただくことで、地域活性化の一助となる。そう信じて、自信をもって営業しています。目に見えない“価値”に共感し、スポンサー契約をいただいたときの喜びは、何とも言えないものです。

再就職活動を振り返って「負けないことは必ずある」気づき

異業界に飛び込んだ私ですが、入社することに大きな不安はなかったんです。業界や仕事内容が違っても“へこたれない姿勢”と“人と協働しながら前に進む”ことは変わらない。これなら負けない自信があった。長いこと働いていれば、誰でも一つくらいは“これだけは負けない”ことがあるはず。これもきっと、キャリアカウンセラーが自分の自信を引き出してくれたからではないかと思い、感謝しています。

これから辞めてよかった

入社して2年。若手の営業もずいぶん成長したように感じます。スポンサー数も増えてきました。小さな組織なので営業だけでなく、ホームの試合の時は看板設営、後片付けと走り回っています。おかげで体力もつきました。数年前から始めているハーフマラソンも、社内で最高年齢の私が一番早いタイムなんですよ。
我々のビジネスは、「顧客を元気にできる」「感動を提供する」ビジネス。試合を見た70歳のスポンサー企業の社長が、若者に交じって大声で応援し、「楽しませてもらったよ」と声をかけられたときなどは、嬉しさを感じる一瞬です。
気が付くと「FC岐阜」にどっぷりはまって、「しゃかりき」になって地元を飛び回っています。カミさんと「この仕事、面白くって辞められないね。あの時に辞めてよかった」とよく話しています。今後は、もっともっとチームに強くなってもらいたい。そのためにスポンサーを増やすのはもちろんですが、試合観戦動員数を増やしたい。サポーターの応援が、チームを盛り上げますからね。ぜひ、試合を見に来てくださいよ。